奨学金は借金か?の答えから、給付型・第一種(無利子)・第二種(有利子)の違い、借りる前に確認すべき授業料減免、返還シミュレーションの立て方、返還が苦しい時の減額返還・返還期限猶予・所得連動返還方式まで、JASSO公式情報に基づき解説します。
・本記事は奨学金制度の仕組みを学ぶための教育コンテンツです。個別の借入相談・返還相談には応じられません。
・給付型奨学金の対象拡大や家計基準は毎年見直されます。本記事は2026年7月時点の日本学生支援機構(JASSO)公開情報に基づきます。
・実際の申込・区分判定・返還方法の選択は、必ずJASSO公式サイトおよび進学先の奨学金窓口の最新情報でご確認ください。
・世帯の状況により結果が変わるケースは、学校の奨学金担当窓口にご相談ください。
結論:奨学金は「借金」か——誠実に答えます
率直に言うと、貸与型奨学金(第一種・第二種)は借金です。卒業後に自分の名前で返していく契約であり、「奨学金だから借金ではない」という説明は正確ではありません。
ただし、条件は一般的なローンよりかなり良い借金でもあります。第一種は無利子、第二種でも利率の上限は年3%で、在学中は無利息(JASSO:第二種奨学金の貸与利率)。銀行の教育ローンやカードローンと比べれば負担は軽い設計です。
この記事は「借りるかどうか」「いくら借りるか」「返せなくなったらどうするか」を、感覚ではなく制度の事実で判断できるようにするためのガイドです。大学生活全体のお金の考え方は大学生のお金の教科書(ピラー記事)もあわせてご覧ください。
奨学金の3類型|給付型・第一種(無利子)・第二種(有利子)
JASSOの奨学金は大きく3つに分かれます。まず全体像を押さえましょう。
| 種類 | 返還 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 給付型奨学金 | 不要 | 住民税非課税世帯〜世帯年収の目安内・資産要件・学業要件あり |
| 第一種奨学金 | 必要(無利子) | 家計基準に加え学力基準が厳しめ。採用枠が限られる |
| 第二種奨学金 | 必要(有利子・上限年3%) | 家計・学力基準は第一種より緩やか。月額2万〜12万円から選択可 |
※出典:JASSO給付奨学金(返済不要)/JASSO貸与奨学金
給付型と第一種を併用する場合、第一種の貸与月額が制限される仕組みになっています(第二種は制限なく併用可)。「まず給付型から検討し、足りない分を無利子・それでも足りない分だけ有利子で補う」のが負担を最小化する順番です。
給付型奨学金の対象|2025年度からの多子世帯拡充
給付型は世帯収入で第1〜第4区分に分かれ、目安は第1区分(住民税非課税世帯)が年収約270万円、第2区分が約300万円、第3区分が約380万円までです。加えて資産要件(本人と生計維持者の資産合計が5,000万円未満。生計維持者が1人の場合は2,000万円未満)と学業要件(GPA等)があります(JASSO:給付奨学金の家計基準)。
2025年度(令和7年度)から、生計維持者が扶養する子どもが3人以上いる「多子世帯」は、所得制限なしで授業料等減免を受けられるようになりました。ただし多子世帯でも資産要件はあり、資産額が3億円以上になると対象外です(授業料等減免の場合。給付奨学金は5,000万円未満が要件)。多子世帯に該当しても自動適用ではなく申請が必要な点に注意してください(JASSO:令和7年度からの多子世帯支援拡充)。この拡充は2026年7月時点でWebSearchにより確認できた範囲の内容であり、区分や金額の詳細は必ず最新の公式情報でご確認ください。
借りる前に考えること|授業料減免と大学独自奨学金を先に確認
奨学金を申し込む前に、返さなくていいお金から検討するのが鉄則です。
- 高等教育の修学支援新制度:授業料等減免と給付型奨学金がセットになった国の制度。対象なら大学の授業料そのものが下がります(文部科学省:高等教育の修学支援新制度)
- 大学独自の奨学金・授業料減免:修学支援新制度とは別に、大学ごとに成績優秀者向け・家計急変対応・地域枠などの独自制度がある。修学支援新制度と併用できるケースもあるので、進学先の奨学金窓口に個別に確認する
- 地方自治体・民間財団の奨学金:給付型が多く、JASSOと併用可能な場合がある
これらを確認したうえで、それでも不足する学費・生活費を貸与型奨学金で補う、という順番が「借りすぎ」を防ぎます。
返還シミュレーションの考え方|借りる前に「月いくら×何年」を把握する
借りる金額を決める前に、必ず「毎月の返還額×返還年数」を具体的な数字で把握してください。第二種は月額2万〜12万円の中から選べますが、4年間借りた総額がそのまま卒業後の負債になります。
JASSOの奨学金貸与・返還シミュレーションで、借入予定額を入力すれば毎月の返還額と完済までの年数を事前に試算できます。「入学時にいくら必要か」だけでなく、「新社会人1年目の手取りから毎月いくら引かれるか」を先にイメージしておくことが、返還開始後に苦しくなるのを防ぐ最大の対策です。
返還が苦しくなった時の制度|放置が最悪の選択
返還が難しくなっても、連絡せずに放置するのが一番損です。JASSOには3つの救済制度があり、早めに申請すれば負担を調整できます。
| 制度 | 内容 | 主な条件・上限 |
|---|---|---|
| 減額返還制度 | 毎月の返還額を1/2・1/3・1/4・2/3に減らし、その分返還期間を延ばす | 給与所得者で年収目安400万円以下(扶養子2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下)。延滞なし・口座振替加入が条件。通算15年(180か月)が限度 |
| 返還期限猶予 | 経済困難・傷病・災害等で、返還そのものを一定期間先送りする | 原則通算10年(120か月)が限度(災害・傷病・生活保護受給等は継続可)。第二種は猶予期間中は無利息 |
| 所得連動返還方式 | 前年の所得に応じて毎月の返還額が自動的に決まる(毎年見直し) | 第一種で選択可(第二種は対象外)。選択すると減額返還制度は併用不可 |
※出典:JASSO:減額返還制度の概要/JASSO:返還期限猶予/JASSO:返還方式について
最悪のシナリオは、これらを申請せずにただ延滞することです。JASSOは延滞3か月以上になると個人信用情報機関への登録対象とし、登録は返還開始から6か月経過後、毎月判定されます。登録されるとスマートフォンの分割払いやクレジットカード、住宅ローンの審査に影響し、情報が消えるのは完済から5年後です(JASSO:個人信用情報機関への登録)。信用情報への影響の詳しい仕組みは信用情報とブラックリストの仕組みで解説しています。延滞しそうだと感じた時点で、まず減額返還か返還期限猶予をJASSOのスカラネット・パーソナルから申請することが最優先の行動です。
社会人になってからの繰上返還の考え方
家計に余裕が出てきたら、繰上返還(前倒し返還)も選択肢になります。手数料は無料です。
- 第二種(有利子):前払いした元本にかかるはずだった利子が不要になるため、返還総額そのものが減る。ボーナス時などまとまった余裕資金があるなら優先度が高い
- 第一種(無利子):利子がないため繰上返還しても総額は変わらず、完済までの期間が短くなるだけ。他の返済(奨学金以外の借入)や新NISAでの積立を優先しても損はしない
(JASSO:繰上返還について)つまり「有利子分から優先して繰上返還し、無利子分は焦らず定額で返す」が合理的な優先順位です。なお在学中の国民年金保険料についても「学生納付特例」という猶予制度があり、奨学金とは別の仕組みとして社会人になってから追納を検討する人が多くいます。詳しくは年金の学生納付特例と未納の違いで解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 親の収入が高いと奨学金は借りられませんか?
A. 給付型は世帯年収の基準を超えると対象外になりますが、第二種(有利子)は家計基準が比較的緩やかで、多くの世帯で対象になり得ます。まず学校の奨学金窓口で家計基準に該当するか確認してください。世帯年収と税負担の関係は大学生の年収の壁ガイドも参考になります。
Q2. 留年したら奨学金はどうなりますか?
A. 標準修業年限を超えると、原則として奨学金の貸与が停止されます(給付型は学業要件を満たさない場合も停止対象)。留年が確定した、または見込まれる時点で、必ず在学中の学校の奨学金窓口とJASSOに相談してください。
Q3. 奨学金は年収に含まれますか?(税金・扶養への影響)
A. 含まれません。奨学金は給与収入ではないため、税金や社会保険の扶養判定で使う「年収」にはカウントされません。バイト収入と混同しないよう注意しましょう。
Q4. 給付型と貸与型は両方もらえますか?
A. 併用は可能です。ただし給付型と第一種を同時に受ける場合は第一種の貸与月額が制限されます。第二種は給付型と併用しても月額の制限はありません。
Q5. 入学後に親が失業・病気になった場合、途中から申し込めますか?
A. 可能です。給付型には「家計急変採用」、貸与型(第一種)には「緊急・応急採用」という随時受付の制度があり、年間を通じて申し込めます。原則、家計急変の事由が発生してから3か月以内に学校経由でオンライン申請する必要があるため、事情が生じたら早めに学校の奨学金窓口に相談してください(JASSO:被災・家計急変時の申込み手続き)。
まとめ:奨学金は「借りる前」の設計で結果が9割変わる
- 貸与型奨学金は紛れもなく借金。ただし無利子・上限年3%という低利で条件の良い借金でもある
- 2025年度から多子世帯は所得制限なしで授業料等減免の対象に拡充された(要申請)
- 借りる前に修学支援新制度・大学独自奨学金で減免できる部分がないか必ず確認する
- 借入額を決める前に「月いくら×何年」の返還シミュレーションを必ず行う
- 返還が苦しい時は減額返還・返還期限猶予・所得連動返還方式の3つの選択肢がある。放置=延滞だけは避ける
- 社会人になったら有利子分から優先して繰上返還すると総返還額を減らせる
大学生活全体のお金の設計図は大学生のお金の教科書で、税金・扶養の基本は大学生の年収の壁ガイドで解説しています。
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この記事を書いた人
ハル|証券外務員二種(日本証券業協会)保有
金融リテラシー教育サイト finance-plan-study.com 運営者(2022年〜)。FX自動売買を自己資金で実運用しながら、NISA・iDeCo・保険など生活者の金融判断に使える知識を、一次情報(金融庁・国税庁等)に基づいて発信しています。