ふるさと納税のワンストップ特例の申請書を出し忘れても、控除をあきらめる必要はありません。確定申告をすれば、所得税の還付と翌年度の住民税の減額で寄附金控除を受けられます。確定申告が必要な人の期限は3月15日ですが、還付を受けるだけの申告(還付申告)なら翌年1月1日から5年間提出できます。ただし、確定申告では、ワンストップ申請を済ませた分も含めて全件を申告する必要があります。必要書類、作成コーナーでの入力箇所、申告後の控除の反映時期を、国税庁・総務省の一次情報にもとづいて整理します。
・本記事は、ワンストップ特例の期限を過ぎたあとの救済手続を学ぶための教育コンテンツであり、特定の自治体・ポータルサイト・返礼品の推奨ではありません。
・申請書の書き方や提出方法など「期限内の正しい手順」はふるさと納税ワンストップ特例の申請方法完全ガイド、寄附できる上限額はふるさと納税はいくらまで?で解説しています。
・制度の内容は2026年10月時点の国税庁・総務省の公開情報にもとづきます。国税庁の確定申告特集は令和7年分が最新のため、令和8年分の画面や様式は変わる場合があります。最新情報は必ず国税庁または税務署でご確認ください。
・個別の税務判断は、税務署または住所地の市区町村にご確認ください。
結論:出し忘れたときに押さえる3つのポイント
- 出し忘れても、確定申告で控除を受けられます。確定申告が必要な人の期限は原則3月15日です。一方、源泉徴収された税金を取り戻すだけの還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁タックスアンサーNo.2030)。申告しないままだと、所得税からも住民税からも控除されません。
- 確定申告をするなら、提出済みの分も含めて全件を書きます。ワンストップ特例を申請していても、確定申告をするとその申請は無効になります(国税庁)。「出し忘れた分だけ追加で申告する」ことはできません。
- 証明書をそろえて、作成コーナーに入力します。自治体の「寄附金受領証明書」か、ポータルサイトの「寄附金控除に関する証明書」を用意し、国税庁の確定申告書等作成コーナーの「寄附金控除」に入力します。e-Taxで送信すれば、証明書の提出は省略できます。
ワンストップ特例を出し忘れると、どうなるのか
ワンストップ特例は、確定申告が不要な給与所得者などが、寄附先の自治体に申請書を出すだけで寄附金控除を受けられる制度です。申請書の提出期限は、多くの自治体やポータルサイトで「寄附した年の翌年1月10日必着」と案内されています。実際の締め切りは、寄附先の自治体の案内を優先してください。
期限に間に合わず、確定申告もしない場合、その寄附は「ただの寄附」として扱われます。2,000円を超える部分が戻ってくる仕組みが使えず、寄附した全額が自己負担になります。
総務省は、ワンストップ特例を申請しても適用されないケースを次のように示しています。自分がどれに当たるかを確認してください。
| 状況 | ワンストップ特例 | 控除を受けるには |
|---|---|---|
| A:申請書を1通も出していない、または期限に遅れた | 適用されない | 確定申告で全件を申告 |
| B:一部の自治体の分だけ出し忘れた(ほかは提出済み) | 確定申告をしなければ、提出済みの分だけ有効 | 出し忘れ分も控除したいなら、確定申告で全件を申告 |
| C:寄附先が6自治体以上になった | 5を超えた分だけでなく、すべて無効 | 確定申告で全件を申告 |
| D:医療費控除などのために確定申告や住民税の申告をする | すべて無効 | 確定申告に寄附金控除も含める |
| E:寄附した翌年の1月1日の住所が申請書の住所と変わったのに、変更届出書を出していない | 適用されない | 確定申告で全件を申告 |
出典は総務省「ワンストップ特例を申請する皆様へ」と、総務省の取扱通知「ふるさと納税ワンストップ特例の取扱いについて」です。通知には、確定申告や住民税の申告が出された場合、申告の内容や提出時期にかかわらず、特例の申請はすべてなかったものとみなされると書かれています。
いつまでに申告すればよいのか
期限は2種類あります。
| 申告の種類 | 対象 | 期限 |
|---|---|---|
| 確定申告 | 副業の所得が多い、医療費控除などの理由で申告が必要な人 | 原則、翌年3月15日(例年の確定申告期間は2月中旬から3月15日まで) |
| 還付申告 | 給与所得者などで、納めすぎの税金を取り戻したい人 | 翌年1月1日から5年間 |
給与所得者のふるさと納税は、通常、還付申告にあたります。国税庁によると、還付申告は確定申告期間とは関係なく提出できます。例えば令和3年分なら、令和8年12月31日まで申告できます(国税庁「所得税及び復興特別所得税の申告等」Q&A)。同じ数え方で、2026年中の寄附(令和8年分)は2031年12月31日まで、2025年中の寄附(令和7年分)は2030年12月31日までです。
早く出したほうが、所得税の還付も住民税の減額も早く反映されます。数年前の分をさかのぼる場合は、住民税の扱いが市区町村で異なることがあるため、申告前に税務署か市区町村に確認すると安心です。
確定申告で取り戻す手順
手順1:寄附の証明書をそろえる
寄附金控除を受けるには、寄附したことを証明する書類が必要です。ふるさと納税の場合は、次のどちらかを使います。
| 書類 | 発行元 | 特徴 |
|---|---|---|
| 寄附金受領証明書 | 寄附先の自治体 | 寄附ごとに1通。郵送や電子データで届く |
| 寄附金控除に関する証明書 | 国税庁長官が指定した特定事業者(ポータルサイト) | その年の寄附額をまとめて記載。令和3年分以後は、受領証明書に代えて使える |
紛失した場合は、まずポータルサイトのマイページで証明書を出せないかを確認し、なければ寄附先の自治体に問い合わせます。再発行に応じるかどうかは自治体によって異なります。
証明書のほか、次のものも手元に置いておきます。
- 源泉徴収票(勤務先から受け取った、その年の分)
- マイナンバーカード(または番号確認書類と本人確認書類)
- 還付金を受け取る口座の情報
マイナポータル連携を使うと、証明書のデータを取得して作成コーナーに自動で入力できます。ただし事前準備が必要で、連携に対応している事業者の証明書に限られます(国税庁)。
手順2:確定申告書等作成コーナーに入力する
国税庁の確定申告書等作成コーナーで、画面の案内にそって進めます。ふるさと納税の入力場所は、国税庁のFAQで次のように案内されています。
| 画面 | 入力すること |
|---|---|
| 「所得控除の入力(1/2)」または「所得・控除の入力」 | 「寄附金控除・政党等寄附金等特別控除」を選ぶ |
| 「寄附金受領証明書等の一覧」 | 「+証明書等の内容を入力する」を押す |
| 入力画面 | 「寄附年月日」と「寄附金の種類」を選び、「寄附金の金額」などを入力する |
出来上がった申告書では、第二表の「寄附金控除に関する事項」に寄附先の名称と金額が入っているかを確認してください。あわせて、「住民税に関する事項」の「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄にも金額が必要です。所得税の確定申告書は個人住民税の申告書を兼ねているため、この欄が空だと住民税の控除を受けられないことがあります(国税庁タックスアンサーNo.1155)。
手順3:提出する
作成した申告書は、e-Taxで送信するか、印刷して税務署に郵送・持参します。書面で出す場合は、証明書を添付するか、提出時に提示します(国税庁タックスアンサーNo.1150)。e-Taxで送信する場合は、証明書の記載内容を入力すれば添付を省略できます。ただし、入力内容の確認のため、法定申告期限から5年間は、税務署から証明書の提示や提出を求められることがあるため、保管しておきましょう(e-Tax)。
「一部だけ出し忘れた」ときの落とし穴
いちばん間違えやすいのが、状況Bです。たとえば3つの自治体に寄附して、2つの申請書は出したのに、1つだけ忘れたとします。
- 確定申告をしない場合:提出済みの2つはワンストップ特例で控除され、忘れた1つの分だけが控除されません。
- 確定申告をする場合:提出済みの2つのワンストップ申請も無効になります。そのため、3つすべての寄附を申告書に書く必要があります。
数字で見てみます(説明用の仮の数字で、寄附額は控除の上限額の範囲内とします)。
| 自治体 | 寄附額 | ワンストップ申請 |
|---|---|---|
| A市 | 20,000円 | 提出済み |
| B町 | 20,000円 | 提出済み |
| C村 | 20,000円 | 出し忘れ |
確定申告をしない場合、控除の対象はA市とB町の合計40,000円です。控除額は40,000円から2,000円を引いた38,000円で、C村の20,000円は全額が自己負担になります。確定申告をする場合、控除の対象は3つの合計60,000円で、控除額は58,000円です。差は20,000円です。
この差と、確定申告にかかる手間を比べて、どちらにするかを決めます。差額が小さければ見送る判断もありますし、差額が大きければ申告したほうが取りこぼしを防げます。
もう一つの注意点があります。確定申告をしたのに、ワンストップ申請済みの分を書き忘れると、その分は無効のまま控除されません。気づいたときは、国税庁の「更正の請求」という手続きで寄附金控除を追加できます(東京国税局)。ただし、追加しても最終的な所得税の額が変わらない場合は更正の請求ができないため、市区町村に相談します。
医療費控除などで確定申告する人も同じ
ワンストップ特例を使うつもりだった人でも、その年に確定申告をする理由ができると、ワンストップ特例は使えなくなります。たとえば次のような場合です(国税庁タックスアンサーNo.1900、No.2030)。
- 医療費が多く、医療費控除を受ける
- 住宅ローン控除の1年目で、確定申告をする
- 年の途中で退職し、年末調整を受けていない
- 給与以外の所得が年間20万円を超える
この場合も、ふるさと納税は申告書に自分で書き込みます。書かないと、控除が抜けてしまいます。
所得税が0円の人は、住民税の申告が必要なことも
年末調整のあと所得税が0円になっている人は、確定申告をしても所得税の還付はありません(国税庁タックスアンサーNo.2030)。一方、住民税の控除は受けられる場合があります。総務省は、所得税が0円で住民税からのみ控除を受ける人は、住民税に関する申告書をお住まいの市区町村に提出する必要があると案内しています。手続きの窓口が税務署ではなく市区町村になるため、まず市区町村の住民税の担当窓口に確認してください。
控除はいつ、どう反映されるのか
確定申告で寄附金控除を受けた場合、総務省の説明では次のようになります。
| 税金 | 反映のしかた |
|---|---|
| 所得税 | 納めすぎの分が、還付金として戻る |
| 住民税 | 翌年度の住民税が減額される |
ワンストップ特例の場合は、所得税からの控除はなく、その分も含めた全額が住民税の減額になります。控除の合計額は同じですが、確定申告のほうが、所得税の還付金として先に戻ってくる分があります。住民税の減額は、翌年度の月々の天引き額に表れます。天引きの仕組みは、初任給の手取りはいくら?計算方法と1年目の変化で整理しています。
来年は出し忘れないために
- 寄附のたびに申請書を出す:同じ自治体に複数回寄附した場合も、寄附ごとの申請が必要です。
- 12月の寄附は余裕をもって:年末年始は郵送に時間がかかります。オンライン申請に対応した自治体なら、早く手続きを終えられます。
- 確定申告の予定があれば、最初から全件を申告する:証明書を保管しておくと、手戻りがありません。
確定申告の進め方は、大学生バイトの確定申告のやり方の手順が参考になります。年末調整と確定申告の関係は、年末調整の保険料控除申告書の書き方で触れています。
よくある質問
期限を過ぎたあとでも、確定申告で控除を受けられますか?
受けられます。還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁)。
1件だけ出し忘れたら、全件を確定申告する必要がありますか?
出し忘れた分も控除を受けたいなら、そうです。確定申告をするとワンストップ申請は無効になるため、提出済みの分も含めて全件を申告します。確定申告をしない場合は、提出済みの分だけが控除されます。
寄附金受領証明書をなくしました。
ポータルサイトの「寄附金控除に関する証明書」で代えられる場合があります。なければ寄附先の自治体に問い合わせてください。
e-Taxで出すときも、証明書を送る必要がありますか?
記載内容を入力して送信すれば、添付は省略できます。ただし、法定申告期限から5年間は、税務署から提示や提出を求められることがあります。
申告前のチェックリスト
- 状況A〜Eのうち、自分がどれに当たるか確認した
- その年に寄附した全件の証明書をそろえた
- ワンストップ申請済みの分も、申告書に含めた
- 源泉徴収票、マイナンバー、還付金の口座を用意した
- 申告書の第二表で、寄附金控除と住民税の欄に金額が入っているか確認した
- 証明書を5年間保管する
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参考:国税庁・総務省の一次情報
- No.2030 還付申告(国税庁タックスアンサー)
- No.1155 ふるさと納税(寄附金控除)(国税庁タックスアンサー)
- No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)(国税庁タックスアンサー)
- 「ふるさと納税ワンストップ特例」の申請書を提出された方(東京国税局)
- 所得税及び復興特別所得税の申告等のQ&A(国税庁)
- ふるさと納税に係る寄附金控除に関する証明書等について(国税庁)
- 作成コーナーで「寄附金控除」を入力したい(e-Tax・作成コーナーFAQ)
- 第三者作成書類の添付省略の制度について(e-Tax)
- ワンストップ特例を申請する皆様へ(総務省)
- ふるさと納税ワンストップ特例の取扱いについて(総務省)
- ふるさと納税のしくみ 税金の控除について(総務省)
免責
- 本記事は2026年10月時点の国税庁・総務省の公開情報をもとに作成した教育コンテンツです。制度や様式は今後変更される場合があるため、必ず国税庁、税務署、お住まいの市区町村の最新の案内をご確認ください。
- 本記事は税務の個別相談ではありません。申告の要否や控除額は、税務署または市区町村にご確認ください。
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この記事を書いた人
ハル|証券外務員二種(日本証券業協会)保有
金融リテラシー教育サイト finance-plan-study.com 運営者(2022年〜)。FX自動売買を自己資金で実運用しながら、NISA・iDeCo・保険など生活者の金融判断に使える知識を、一次情報(金融庁・国税庁等)に基づいて発信しています。
▶ 次のステップ
出し忘れの対処が分かったら、次は来年に向けて、期限内の正しい手順と、寄附できる上限額を確認しておきましょう。
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